- 出演者
- 桑子真帆
日本のがん検診の受診率は4割と低い水準。がん検診の第一人者として受診率向上を訴え続けてきた医師がいるが、その医師自身のステージ4の肺がんが見つかった。医師は毎年がん検診を受けていたのに早期発見が出来なかったのだ。それでもなお「検診が命を救う」と訴え続けている。医師の言葉からがん検診の意義と見えてきた課題を考える。
オープニング映像。
医師・松田一夫さんは肺がんを患い、脳や腰にも転移しているという。肺がんが見つかったのは去年3月のがん検診で、手術が出来ないほどがんが進行していてステージは4だった。見つかった翌日からは長年続けたがん検診の仕事から離れざるを得なかったそうで、松田さんは「敵はてごわい」と話す。毎年がん検診を受けていたのにがんが去年まで見つけられなかった理由について、松田さんの検診を担当している田中さんによると「松田さんのがんは鎖骨の後ろにありX線の死角だった」という。松田さんはがん検診への長年の貢献を表彰される場で自らのがんを公表し、謝罪した。松田さんはがん検診の限界を痛感したそうだが、その一方でがん検診は希望にもなったという。検診のおかげで重大な症状が現れる前に発見でき、有効な抗がん剤を割り出すことが出来たからだ。薬の効果で現在肺のがんは縮小し、脳へ転移したがんも少なくなった。
松田さんは長年がん検診の現場に立ちながら受診率向上に努めてきた。その上で大きな障害となったのが、がんがあるのに検診で陰性とされる「偽陰性」だ。松田さんは偽陰性の実態をあきらかにしようと、福井県内の4万2000人以上の大腸がん検診のデータを追跡し、パソコンに入力していた。その結果、実際に大腸がんになっていた患者のうち23%が1度目の検診で偽陰性となっていた。しかしその内翌年も検診を受けてがんが発見された人は、前年に見つかった人と生存率が変わらないことが分かった。つまり、毎年検診を受けることで偽陰性の影響を減らすことができると示したのだ。松田さんは「私がこうなったからといってがん検診を否定するつもりはさらさらない」「まずはがん検診を受ける方がいい」と話す。そして松田さんは闘病を続けながら職場に復帰し、講演会などでがん検診の向上のため発信に力を入れている。日本のがん検診受診率をあげて死亡率を下げることが使命だと考えているそう。
松田さんをスタジオに迎え話を聞く。現在はがんの治療技術が進歩しているので、早期に発見できれば9割以上が助かる時代になっているそう。国が推奨するがん検診は子宮頸がん、乳がん、肺がん、大腸がん、胃がんの5つで、継続して受診することが偽陰性の影響を減らすためにも重要だという。松田さんは「継続して受けると早期治療に結びつけられる」などと話した。日本のがん検診受診率は諸外国に比べ低く、死亡率は高い。「受診率が高ければ死亡率を下げることができる」と松田さんは話した。日本は検診を実施する主体が自治体、会社、人間ドッグなどと3つに分かれているが、この仕組みに課題があるという。
浅見さんは悪化していく大腸がんに気づかず、人工肛門にせざるを得なくなったという。浅見さんはかつて会社が行うがん検診を定期的に受けていたが、定年退職した後は会社での検診が受けられなくなった。退職後自治体から検診の知らせは届いていたはずだが、「まあいいか」と思って時間が過ぎていったという。日本のがん検診は自治体、会社、人間ドッグなどと、その主体が3つある。浅見さんのように会社で受け続けていた人は退職を機にがん検診から離れてしまうことも少なくない。浅見さんは検診を受けなくなって8年経ったある日に鮮血が出たそうで、大腸の一部と肛門を切除したという。浅見さんは「会社と自治体で一貫して同じレベルの検診が受けられる制度があったらどれほどいいだろう」と話す。
定期的に会社の乳がん検診を受けがんの疑いはないと言われていた60代女性は、身体を洗っている時に胸のしこりに気が付き、ステージ2の乳がんであったことが発覚したという。発病後、女性は自分が受けていた検診方法に疑問を感じるようになったそう。当時は検診の種類などを正確に理解していなかったという。女性が受けていた検診はエコー検査だが、国が推奨しているのはマンモグラフィー検査だった。自治体のがん検診には国による指針があるが、会社の検診や人間ドッグには指針がなく検診方法もバラバラなのだ。こうした現状に対し国は、「死亡率減少効果があきらかでない検診方法のうち『早期発見』を目的とした個人の判断に基づくがん検診も存在すると認識しており、国としてその実施は妨げていない」としている。
松田さんに話を聞く。自治体は国の指針に基づいてがん検診を行っているが事業所で受けられない人に案内されていないこともあるそうで、会社は科学的根拠のある検診を必ずしもやっていないそう。日本は全体像を把握できていないことが1番の問題だという。そこで松田さんが提案しているのが組織型検診だ。これは受診者を名簿で管理し、適切な受診を案内するという体制。厚生労働省は今後のがん検診について、将来的には本人の同意を得ながらデジタル基盤を活用して組織型検診の仕組みを検討していくとし、今月からは市町村が住民に調査票などを送ってがん検診の受診状況を把握する取り組みを始めているという。
がんに関する世論調査では、がん検診を受診しない理由について「いつでも病院にかかれる」「経済的負担がある」「時間がない」などといった声があがった。これに対して溝田さんに話を聞くと、がん検診は無症状で見つけられるし、公費で補助も出るし、検診を受けた方が節約になるとのこと。「検査方法についても今は痛みが少なくなっている」と溝田さんは話した。最後に溝田さんは「検診の案内がきたらぜひ受けてほしい」と呼びかけ、松田さんは「みんなが検診を受けられるようにしないといけない」などと話した。
