山田に今後“世界で勝つ”作品について語ってもらった。「映画はシンプルに言うと、商業とアートという両極端な価値観の中で葛藤しながらもがいている。バランスの取り方を発明していくしかない」などと語った。山田が映画制作で心がけている3つの流儀を教えてくれた。1つ目は「半径5m以内を深掘り」。借り物ものの物語は弱い。世界中の人たちが同じように感じる普遍的な地下水脈をぶち当たることがとても大事な方法論などと語った。「ゴジラ-1.0」は戦後すぐが舞台だが、コロナ禍の影響を受けたという。2つ目は「唯一無二の発明を生む」。新たな発明を生むには過去の手法を知りリスペクトしないといけない。黒澤明監督「羅生門」(1950年公開)は殺害事件の食い違う証言をそれぞれの視点から描いた作品。「羅生門」は全て「回想」で描かれたが、「怪物」では回想を使わなかった。脚本の坂元裕二と是枝裕和監督が今まで積み上げてきた技法を使ってすごいレベルに着地してくれたという。3つ目は「良質な問いを投げかける」。どんなメッセージを伝えたいですか?とよく質問されるが、映画はメッセージを伝えるものではないなどと語った。日本の作品が世界で勝つためには「日本にしかないテーマ。日本とは何か?日本人とは何か?と深掘りできるものだったら何でもいい。若者たちの葛藤を描くだけのラブストーリーでも世界に届くと思う」などと語り、イギリス発のドラマ「アドレセンス」を例に説明した。女性生徒殺害事件を軸にSNSいじめなど様々な社会問題が交錯する。シリーズ全4話をすべてワンカットで撮影し、エミー賞では作品賞を含む8部門を受賞した。今後やりたいことを聞かれると、海外の映画作家といっしょに映画作品を生み出してみたいと答えた。
