ハゼの住む環境や多様性にも興味を抱かれてきたという上皇さま。林さんは60年近くそんな上皇様の研究に協力してきた。ハゼを通すとその先に見えてくるものがあるそうで、「ハゼに見られる多様性が日本の生物多様性に非常によく似ている。つまりハゼがそれだけ種類が多いので、日本の生物多様性をハゼに置き換えるというとそういう言葉も使える。いままで書かれた論文を調べてみれば、ハゼの多様性は分布域がこれだけ違っていて種もこれだけいて、とるエサも違い、生活の様子も違うということになれば、これがいま日本で生物多様性と言っているものに該当するのではないか」と語る。長年にわたる功績は世界からも称賛を集めてきた。平成10年には科学の進歩に貢献した国家元首などに送られるイギリスのチャールズ2世メダルを受賞された。その目はあとに続く研究者にも向けられている。9年前、国際親善のためベトナム・ハノイを訪問した際、博物館に立ち寄られた。ここに飾られていたのは以前上皇さまが寄贈されたハゼの標本だった。上皇さまの研究で新種として発表された後、採集場所のベトナムに戻された。ハゼの研究がベトナムでも一層進むことが期待されている。いまも研究者として歩まれている上皇さま。ハゼとの日々について「振り返ってみると何日も何日も顕微鏡を覗き込み、ついに次々と頭部の感覚器官の配列の特徴を特定できたときの喜びを思い出します」「尽きることのない未知の研究領域のあるハゼ類を研究の対象としたことは私にとって非常に幸せなことであったと思います」と言葉にされている。
